イン ザ・ミソスープ作者: 村上龍出版社/メーカー: 読売新聞社発売日: 1997/09メディア: 単行本 クリック: 40回この商品を含むブログ (21件) を見る

限りなく透明に近いブルーを読んで村上龍熱が再燃してしまった。
私は彼の文章にはどこか麻薬的なところがあると思っている。そりゃ、処女作に比べると他の小説は見劣りはするが、村上春樹などと比べればまだ我慢できる。
彼の欠点は、口下手なくせによく喋るところだろう。あまりにもストレートすぎして興が覚める、という意見は素直に賛成できる。しかし、話し上手な作家が彼のような小説を書くと、よく見かける自己陶酔型の語り口になってしまう。それは一つの娯楽として成立しているとは思う。例えば、トルナーレの映画がそうであるように。
それに対して彼の文章はどこか冷静だ。それは画家としての村上龍が存在するからだろう。一歩引いた目線というのか、彼は見ることを知っている。故に彼は見たことを文章にするのがうまいのだろう。それは、したり顔で心の機微を描く作家とは違い、静寂や品の良さを持っている。そういった彼の文章が書く沈黙は、沈黙であるが故に前記した作家たちとは違う文脈が存在し、彼の文章を常習せずにはいられなくするのだろう。
それは処女作を何度も読み返すのが一番よいのは知っているが、そこまで娯楽性を無視できる人間ではないので他の小説を読んでしまう。そして、この小説は比較的よかった。